ダーティープロジェクターズインタビュー

ベイルートインタビュー

ーヴォーカル・スタイルもとても特徴的ですが、今の歌い方は初期の段階から?

デイヴ:最初から狙ってたわけじゃない。ヴォーカルが会話や言葉の延長線上にあるものではなく、あくまで楽器として捉えていたという点は最初からだけどね。

トクマル:音自体も独特なサウンドメイキングですけど、自分でミックスしたりもするんですか?

ダーティープロジェクターズ×トクマルシューゴ インタビュー写真
7月14日にリリースされた最新作『Swing Lo Magellan』

デイヴ:今回のアルバムはそうだね。僕はいつもわりと盲目で、とにかくやってみて、そこで何か発見することが好きなんだ。前作の『Bitte Orca』を制作して、わりといろんなことが達成できたと思った時に、〈じゃあ、次のアルバムでは何ができるのか?〉となった時に思ったのが、自分を山奥に押し込んで独りぼっちで何かを制作するっていうことだった。それが自分を成長させることになると思ったんだ。エンジニアリングに関しては、細かいレコーディングのテクニックにそれほど興味があるわけではないんだけど、レコーディングというのはとてもナイーヴな作業で、そこでの試行錯誤や発見にすごく興味があるから一人でやるほうが向いてるっていう感じかな。特に新作はそうだった。

トクマル:特にドラムのサウンドが好きだったんですけど、なんか妙に生々しい音ですよね。

ダーティープロジェクターズ×トクマルシューゴ インタビュー写真

デイヴ:生々しいだろう?(笑)今回ビートに関しては、スウィングがあって、グルーヴがあるビート作りをすごく心掛けたんだ。去年の8月頃、うちのリズム隊のブライアン(・マッコンバー)とナット(・ボールドウィン)と僕とで小屋の屋根裏部屋みたいなところに籠って、1日10~12時間、ずっと一緒にグルーヴを確認しあうような作業をしていた。僕は左利きでうちのドラム(ブライアン)は右利きだから、僕が作ったビートを左右でスイッチしたりして、いろいろ試しながらやってみたんだ。

ーソングライティングの理想的なシチュエーションってあります?

デイヴ:理想の環境というのは特にない。いろんなシチュエーションで曲は生まれるし、消えて行く。ビニールハウスのなかで育つ花も美しいとは思うけど、砂漠に咲く花も等しく美しい。いろんな状況があって、それそれが美しいんだ。

ベイルートインタビュー

ーちょっと話を変えて、例えば休日は何をして過ごしていますか?

デイヴ:美味しいものを食べて、散歩して自然と触れ合うのが好きだな。

トクマル:外に出掛けるんですね。

デイヴ:でも、僕には休みがほとんどないし、絶えず音楽のことを考えている生活だから、休みらしい休みはないなあ。君はどうなの?

トクマル:僕も休みっていう感覚はよくわからないです。

デイヴ:だよね(笑)君はレコーディングからミックスまで全部自分でやっているけど、自分より優れたエンジニアを雇おうとは思わない?もし雇えば、自分はただアーティストとしているだけで済むのに、あえてそれを自分でする理由は?

ダーティープロジェクターズ×トクマルシューゴ インタビュー写真

トクマル:他人に気を使わずに好きなだけ時間がとれることですね。あと、曲作りの過程の全部が好きなんですよ。楽器や機材を選んで、どうやってレコーディングするか。どんな音にするか、どんなパッケージにして、どんなふうにして売って、どんな風に聴いてもらいたいか。そういうのを全部やりたいっていうのがあるのかもしれないですね。最終的に、レコード屋に行って自分のCDを買うっていう。

デイヴ:ワオ! ユー・アー・オール・イン(笑)仕事の時間を決めてやってるの? そのバランスを保つ方法は?

トクマル:いや、保ててないですよ(笑)

ーデイヴはどうやって保ってるんですか?

デイヴ:うーん、それってスゴくタフな問題だよ。ガール・フレンドのアンバー(・コフマン)と一緒に住んでいるってこともあって、自分のパートナーとバンドをやるというのは極端な選択だと思うからなかなか難しいけど、でも、それは美しいことだ。

ーなるほど、お幸せに(笑)時間も押してしまってるので、今日はこの辺で、有り難うございました……。

デイヴ:ちょっと待って!!それじゃまだ終われない!(笑)…僕にとっては、1日28時間、いや、31時間ぐらいあれば、もちろんアーティストとしての作業もできるし、人間らしい生活も送れると思うんだけど、残念ながら24時間しかないから、そのバランスが自分にとっては一番難しいんだ。でも、どうやらシューゴは、そこらへんが僕よりもうまくできてるように見えるな。

トクマル:いや、人間らしい生活とは言えないですよ。

デイヴ:じゃあ、今お互い同じような問題を抱えている時に、こうして話しあえて良かったんじゃないかな?(笑)

ダーティープロジェクターズ×トクマルシューゴ インタビュー写真
対談中に水のペットボトル4本飲み干したデイヴ氏と、「自分もサングラス持ってくれば良かった」とトクマル氏

【2012年5月15日】

Dirty Projectors(ダーティー・プロジェクターズ)
米ニューヨークはブルックリン出身の6人組バンド。2002年にデヴィッド・ロングストレス(Vo, G)が中心となりバンドを結成。幾度のメンバーチェンジを経て、現在はデイヴに加えてナット・ボールドウィン(B)、アンバー・コフマン(G, Vo)、ブライアン・マックーマー(Ds)、ヘイリー・デックル(Vo)、エンジェル・デラドゥーリアン(Vo)の6人編成となる(最新作では休養中のエンジェルを除く5人編成になっている)。現在までに5枚のスタジオ・アルバムを発表。英DOMINO移籍後初めて発表した2009年の5作目『ビッテ・オルカ』が年間ベスト・アルバムを総なめにし、本格的ブレイクを果たす。2011年、ビョークとのチャリティー・コラボ作品『マウント・ウィッテンベルク・オルカ』が待望の初CD化され、大きな話題となる。
more info: HOSTESS ENTERTAINMENT

LIVE INFOMATION
2012年10月9日 (火) @ 渋谷 O-EAST
2012年10月10日 (水) @ 名古屋 CLUB QUATTRO
2012年10月11日 (木) @ 梅田 CLUB QUATTRO
more info: SMASH

<< 前のページへ[1/2][2/2]

copyright©Tonofon. all rights reserved.