ゲラーズ『THE BEST』曲順検討スペシャル座談会
司会&構成 柴崎祐二(以下:柴):今回、ゲラーズのベスト盤がLPでリリースされることになったんですが、メンバーに選曲を任せると紛糾して一向に進まないだろうということで……バンドに縁の深い皆さんに、ゲラーズが過去にリリースした曲の中から「ベスト盤に入っていてほしい」というテーマで順位をつけて、それぞれ10曲ピックアップしてもらいました。
アンケートに参加してくれたのは、以下の皆さんです。
●メンバーの友人であり、未だリリースされていない幻のセカンドアルバムのプロデューサーでもあるシンガーソングライターの王舟さん。
● 「Guatemala」のジャケットイラストを手掛けるなど、メンバーと深い交流を持つ漫画家の大橋裕之さん。
●長くゲラーズのライブ映像を記録し、「Guatemala」のMVの監督も努めた映像作家の大石規湖さん。
●ヴォーカルの川副賢一さんをはじめ各メンバーと古くから交遊を結び、長くバンドに注目してきたライター/編集者の九龍ジョーさん。
●ゲラーズよりも一世代後の東京オルタナロックシーンを牽引してきた昆虫キッズの元フロントマンで、現在はソロアーティストとして活動する高橋翔さん。
●バンド「森は生きている」時代のライブ共演を経て、後期ゲラーズのデモ制作にも関わった谷口雄さん。
●ゼロ年代からゲラーズとともにインディーロックシーンで活動してきたOGRE YOU ASSHOLEの出戸学さん。
●ゲラーズの大学時代からの盟友で、「今日のできごと」では作詞と作曲、そして歌唱も担当したシンガーソングライターのHara Kazutoshiさん。
●元シャムキャッツのドラマーで、後期ゲラーズのサポートも務めた「弟分」的存在の藤村頼正さん。
●同じく後期ゲラーズのサポートドラマーをレギュラーで務めた、THE NOVEMBERSの吉木諒祐さん。
●今回ご協力いただいた中でも特に古くからメンバーと交流を重ねてきたミュージシャンで、vapour trailとして活動する松本頼人さん。(1st album『Gellers』"M"にヴァイオリンで参加)
●ゲラーズのライブPAオペレーターとしてバンドをサポートし、数多くの現場で彼らの勇姿を目撃してきた「ナンシー」こと溝口紘美さん。
●ゲラーズとの対バン経験をはじめ、メンバーの田代幸久さんが店長を務める「スナックしろくま」での給仕経験をお持ちのトリプルファイヤー吉田靖直さん。
●トクマルシューゴバンドのメンバーで、長らく新町慎悟(シャンソンシゲル)さんともバンドメイトでもあったシンガーソングライターのyunniko(YankaNoi)さん。(1st album『Gellers』"Niwatori"にトロンボーンで参加)
●そして、トクマルシューゴさんのスタッフを経てバンドと交遊を結び、なぜか「Guatemala」のPVに男優として駆り出された経験を持つ私こと柴崎というメンツです。
王舟(以下:王):いやー、めちゃくちゃたくさんの人が関わってますね(笑)。
柴:ベスト盤企画とはいえ、活動休止中のバンドのリリースにこれほど多彩な人たちがよく協力してくれたものだよね(笑)。で、みなさんからのアンケートを反映したランキング集計結果は以下の通りとなりました。
1位. Guatemala
2位 Cumparsita
3位 9 teeth Picabia
4位 Buscape
5位 M
6位 Colorado
7位 Niwatori
8位 Locomotion
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9位 H.E.P.
10位 今日のできごと
11位 DARUMA
12位 FLASHBACK BITCH SONG
13位 Suger
14位 Pink Hawaiian Moon
15位 Hatomune
柴:これを元に、アナログ盤AB面それぞれの曲順を話し合いながら決めていこうっていうのが今日の座談会の趣旨です。てか、これを見ると、「10曲選んで下さい」って言っても、そもそも15曲しか候補がないんだよね(笑)。
王:結成からのキャリアでいえば20年以上あるはずなのに……少なっ!
柴:しかも、ゲラーズの曲って尺が長いものが多いから、LPの収録時間を考えると、上限8曲しか入らないっていうね。
王:大前提として、アルバム1枚しか出してないバンドなのに、ベスト盤っておかしいよね(笑)。
柴:そう(笑)。それにはいろんな事情があって。元々この企画は、ゲラーズのメンバーの誰かが「サブスクってあるじゃん?俺たちの曲、そのサブスクってやつにないよね?配信できないかな?」ってところから始まっているらしいよ。
王:へえ。
柴:でまあ、配信は配信でやることになったんだけど、いろいろ話しているううちに、「せっかくだからLPもあったらよくない?」という話になってきて。
王:想像できるね(笑)。
柴:最初はコンプリート音源集を2枚組LPで出すっていう案もあったんだけど、調べてみると7,000円とかの定価になっちゃうことが分かって諦めたんです。昨今原材料費もめちゃくちゃ高いからね……。
王:なるほど。
ゲラーズとの出会い
柴:とかとか二人で話しているうちに徐々に他の人たちもZOOMに入室してきたね……バンドの周りにいた人たちもみんないい大人になってきてるから、こういうオンライン座談会をやろうと思ってもなかなかスケジュールが合わないのよ(笑)。仕事とか、赤ちゃんの寝かしつけがあったりとか。だから今日はアンケートに協力してもらった人のうちたまたま都合のついた人が参加してくれることになってます(笑)。あ、ナンシーさん、お疲れさまです。
溝口紘美(以下:ナ):どうも〜。今外にいてフルで参加できなそうなので、挨拶だけでもと思って。
柴:なんかスミマセン。最初に訊いちゃいたいんですけど、ナンシーさんとゲラーズの出会いってどんな感じだったんですか?
ナ:記憶が曖昧なんですけど、多分ファーストアルバム『GELLERS』(2007年)が出た後タワレコのインストアライブに遊びに行って、打ち上げでメンバーを紹介されたんだと思います。そのとき、川副くんがずっと安めぐみの魅力について熱弁してて変な人だなあと思いました(笑)。そこからライブのたびにPAを頼まれるようになって、2017年の活動休止までずっとオペしてたって感じですね。だから私はステージの印象がすごく強くて。今回のアンケートも当時のセットリストを意識して選びました。けど、順位をつけるのは難しくて……。
柴:たしかに、ナンシーさんだけ、「順位付け不能」でぜんぶ並列でしたね。
ナ:そう。今回曲を聴き直して、本当にいい曲ばっかりだし、大好きなバンドだったな〜って感傷的になってしまったり。あ、過去形にしたらあかんか。
柴:一応、「活動休止」って正式に発表したわけじゃないですからね。なんかふわっとした状態で宙に浮いているというか……。あ、吉木(諒祐)くんも入室しましたね。吉木くんはどんな出会いだったの?
吉木諒祐(以下:吉木):結構昔に遡るんですけど。ゲラーズがファーストアルバムを出す前、吉祥寺のバサラブックスで売ってた初期のデモとかも買ってるんですよ、俺。そのときは大学生だったんですけど、同級生が田代さんとバイト先が同じだったり、ちょっと繋がりがあったりして。それで紹介してもらったのが最初かな。
で、THE NOVEMBERS主宰でゲラーズを呼んで企画をやったんですよ。それがたしか2005年頃。そっからは普通にずっといちファンとしてライブを観てた感じなんですけど、2015年にいきなり田代さんから連絡があって、「ドラムをやってくんない?」って言われて。
柴:脱退したシゲルさんの後任として。
吉木:そう。シゲルさんのドラムって全然定石に縛られないっていうか、めちゃくちゃ個性的じゃないですか。同じ曲でもライブ音源とスタジオ録音でやってること全然違うし、なんならライブごとにプレイが違ってるっていう。だからそのとき田代さんには「俺が入ったらドラム普通になっちゃいますけどいいですか?」って言った記憶があります(笑)。俺の他にも、藤村くんとか、佐久間(裕太)さんがデモ作りを手伝ってたりもしてましたよね。
そういえば、活動後期にも結構新曲作ってリハしてたけど、あれはどうなっちゃったんだろう?王舟くんがプロデュースして録音しているって話は聴いてたけど……。
王:途中で止まっちゃってますね。っていうか、「俺がミックスとか進めますからパラデータください」って川副さんに言ってたんだよね。けど、オーソン(大久保日向)さんの使っているDAWが俺のと違うか何かで、送り方がわからないみたいな話になって。「え、ホントに?」みたいな。川副さんがじゃあ俺もDAW買おうかなーみたいな話になって…いろいろメンバー間のやりとりがこじれた結果なんとなく作業が止まって、それっきり(笑)。もう5〜6年前の話ですよ。
柴:ほとんどアレンジとかも出来上がっている感じだったらしいね。
王:俺もパラデータが手元にある曲を自分なりにミックスして、それ用に新しい機材を買ったりもしたんだけどね。だんだんメンバーたち自身も音源を出したいのかなんなのかわからない感じになっていって……。
柴:王舟くんとゲラーズの出会いは?
王:最初は、松本(vapour trail)さんとyunnikoさんと原(Hara Kazutoshi)さんが(八丁堀の)七針でソロライブ企画をやってて、そこに遊びに行ったんだよね。そしたら客席にトクマルさんがいて、「あ、有名人だ」とか思って(笑)。そこからトクマルさんとつながりができて。で、トクマルバンドのメンバーにシャンソン(シゲル)さんがいて、更にシャンソンさんから田代さんを紹介してもらって飲みに行って……みたいな感じでつながっていったんだと思います。
その後ゲラーズのリハに遊びに行ったのも大きかったかな。トクマルさんは壁によりかかりながらダルそうにギター弾いてて(笑)。合間の時間にスタジオ内で普通に夕飯食ったりしてて。オーソンさんは膝立ちの姿勢でベース弾いてて、川副さんは一曲終わるごとに下ネタトークをしてて、田代さんはそれにあわせて相槌打ってて。で、シャンソンさんはケータイでゲームしてる(笑)。誰も進行役がいないから「次はこの曲」とか全然合図がなくて、なんかのきっかけで演奏が始まるんだけど、それがめちゃくちゃカッコいい。で、終わると特に感想を言うとかもなくまた元の状態に戻るっていう(笑)。
柴:ある意味、自然体の極地。
王:そんときは「言葉を交わさなくてもみんなお互いのことわかってるんだ、こういうバンドに憧れるなあ」とか思っていたんだけど、後々に話を聞いたらみんなそれぞれそういう状態に不満を抱えていたらしくて(笑)。
柴:じゃあ、次に(高橋)翔くん、いかがですか?
高橋翔(以下:高):えーと、元々存在は知っててカッコいいバンドだなって思ってたんですけど、2011年2月に幡ヶ谷のForestlimitで前野健太さんとゲラーズと昆虫キッズのスリーマンがあったんですよ。それが初対面でしたね。ライフ終わった後、お疲れさまですって明るく声掛けようと思ったら、なんかそういう感じでもなくて、意外と内向的な人たちなんだなって思ったのを覚えてます(笑)。で、その後少しして、プライベートで田代さんと飲む機会があって、そっから交流が始まった感じですね。
柴:吉田(靖直)くんは?
吉田靖直(以下:吉田):僕は主に田代さんと仲良くさせてもらってたんですけど、最初は、池袋のミュージックオルグで田代さんやどついたるねんの山ちゃんたちが一緒にラモーンズとかのカバーをやる謎のバンドとトリプルファイヤーが対バンしたのが出会いだったと思います。たしか2013年頃……。その日の打ち上げで、高橋さんと田代さんに連れられて新大久保まで飲みに行った、っていう。
高:まあ、ダラダラした飲み繋がりだよな(笑)。
みんなの「憧れ」、ゲラーズ
柴:大石(規湖)ちゃんは?
大石規湖(以下:大):私は最初トクマルさん経由でゲラーズの存在を知って。そしたらすぐに、2008年の3月で活動を一旦休止しちゃうってのが告知されて。
柴:一回目の活動休止ね。
大:そう。ぜひその日のライブを撮りたいって思って、その一週間前くらいにあったUFOクラブのライブに行って「活動休止ライブ、撮影させて下さい!」ってメンバーに直談判してOKしてもらったんです。そのときに撮った「Buscape」の映像は今もYouTubeに残っていると思う。
柴:あれはめっちゃカッコいい演奏だよね。
大:で、2010年からまた活動再開して、そしたら新曲のMV制作の相談を受けて。それが「Guatemala」。このMVが公開されたのは2011年の4月だけど、準備も含めたら2010年の前半からやってたんじゃないかなあ。ゲラーズって、とにかく全てのペースがゆっくりで(笑)。常識的なスケジュール感覚が通用しないんですよね(笑)。
柴:(笑)。
大:ライブを撮影してても、毎回トラブルだらけでハラハラしましたね。ギターの弦が切れたり、ストラップが外れたり、なぜか楽器から音が出なくなったり、暴れて怪我したり。
柴:川副さんのギターのストラップ、外れまくってたよね。なんで交換しないんだろうと思って観てたな(笑)。
吉木:あのストラップは川副さん的にはこだわりがあるらしいですよ。一度、Shimachuで買ってきた変な紐を付けてライブした日があったんだけど、ソッコーで切れて「やっぱいつものやつじゃなきゃ駄目だわ」って言ってましたから(笑)。
あと、すごくよく覚えているのが、ある日のライブで川副さんが間奏の長さを間違えて早めに歌い出しちゃったことがあったんですよ。俺はあわてて川副さんに合わせたんだけど、他のメンバーみんなまったく合わせようとしてなくて衝撃を受けました(笑)。
大:誰かがトラブっても、他のみんな我関せずって感じでしたよね(笑)。
高:多分、他のメンバーに関心が無いんじゃないかな?(笑)
大:柴ちゃんはどんな出会いだったの?
柴:俺は2009年にPヴァインに入ってすぐトクマルさんのスタッフをやりはじめたのがきっかけですね。トクマルさんのライブの打ち上げで田代さんと仲良くなって、活動再開したゲラーズのライブによく遊びにいくようになったんです。そしたら、なぜか『「Guatemala」に出てくんない?』って言われたっていう。まさに黒歴史といいますか……いや、嘘ですけど(笑)。
吉木:俺の中では今でも『「Guatemala」の人』って印象ですよ(笑)。
柴:あ、yunnikoさんも来ましたね。今みんなにゲラーズとの出会いを訊いてます。
yunniko(以下:y):私はどうだったかな……。よく覚えてないんだけど、多分直接の接点ができたのは、私が昔参加していた「のんきな患者」っていうバンドでゲラーズと対バンしたのがきっかけだった気がする。たしか、2005年1月のO-nest。その前から、nhhmbase とかgroup_inou を観にO-nestによく行ってたんだよね。だからゲラーズも最初はその界隈の人っていう印象で。で、その対バンのとき私がアコーディオン弾いているのをみてトクマルさんがマジックバンドに誘ってくれて、そこでシゲルさんともつながって…って感じです。
柴:そう考えるとかなり長いですね。
y:いろんな局面を見てきましたね(笑)。 私、元々ロックバンドをやりたかったから、幼馴染同士で集まったバンドっていうのにすごく憧れてたんだよね。
柴:自分も含めて、皆さんの話を聞くと、ゲラーズという存在にそれぞれのロマンを投影している感じがしますね。自分が達成できなかったことを託しているっていうか(笑)。
y: だからこそみんなそれぞれ勝手に手伝っちゃうっていう(笑)。社会人になってからはもちろん、大学生の段階で知り合った友達同士で組んだバンドだったら絶対もっと早く分解していたと思う(笑)。あんな訳のわからない時間を一緒に過ごすのは、よっぽど子供の頃から見知った関係じゃないとキツイはず(笑)。
大:バンドって、究極的にいうと、「なんでやっているの?」って訊かれたら当人たちも答えることが出来ない、そういうふうに目的とかを超えた存在なんじゃないかなってよく思うんですよ。ゲラーズは、そういう意味の「バンド」そのものって感じがしますよね。もしかするとその辺りは、具体的な成果が見えてこないのに制作につきあっていた王舟くんが一番身にしみてわかってるかもしれないけど……。
王:でも、一緒に作業しているのは楽しいよ。「実らないのにやり続ける」関係性があるって、なんていうかすごく励まされるし。
大:単にダラダラやっているわけじゃなくて、ディティールへのこだわりとかすごいもんね。その姿勢には私も影響されること多かったなあ。
吉木:ディティールの指示の仕方がすごく独特だから、戸惑っちゃうんだけど面白い。こういうドラムを叩いてくれっていうときも、川副さんとかすごく抽象的な指示しかしないんですよ。しかも、それを他のメンバーが補足しないっていう(笑)。
オープニングはやっぱり……
柴:さて、そろそろ曲順を決めていきましょうか。各人どういう指針で曲をピックアップしていったのか……えーっと、じゃあこれまで発言の少ない吉田くんどうですか?(笑)
吉田:……実を言うと、自分はそんなにゲラーズの曲を深く聴いていた人間じゃないので……アンセム感のある有名な曲をまず上位に選びました。とりあえず、「Cumparsita」と「Guatemala」を一位と二位にして。ライブで観てテンションが上がるのがこの二曲。そのほかの曲はあんまり覚えてません……。
高橋:正直だな(笑)。
y:私もやっぱり「Cumparsita」と「Guatemala」はすごい曲だと思うなー。どっちもキャリアでいったら後期の曲だけど、裏を返すと、年を追うごとにどんどんすごくなっていったってことでもあるよね(笑)。
柴:真面目な話をすると、「Cumparsita」は電子音の処理の仕方とかサックスを交えたアレンジとか、初めて聴いたとき、ゲラーズってこういうのやるんだ!って驚いた記憶があります。
y:リリースが2014年って考えると、あの80年代感は今思うとちょっとだけ早かったよね。みんなが80’sっぽいものをやりだす少し前。もっと後に出してたらすごい話題になったかもしれない(笑)。
柴:玉ちゃん(玉田伸太郎)が監督したMV含めて超コンセプチュアルですよね。
吉木:ライブのときもお客さんみんな「Cumparsita」待ちしているみたいな感じありましたからね。
柴:この座談会の前に個人的に仮で考えた曲順があるんですけど、それもやっぱり「Cumparsita」と「Guatemala」がそれぞれA面B面の頭に来てます。人気曲を頭に持ってくるモータウン方式。「Cumparsita」のイントロの「ティリリーン!」っていうギターの音もオープナーっぽい。小田和正の「ラブ・ストーリーは突然に」的な。
高:「Cumparsita」ド頭は俺もしっくりくる。俺はB面最後にもう一回「Cumparsita」入れてほしいくらい。
一同:(笑)
柴:それでいうと、元の「Cumparsita」自体も一度無音になってからまたアウトロがフェードインしてくるよね。
王:ああ、あれのアウトロフェイドインをB面の一番最後に入れちゃえばいいんじゃない?アルバム全体を「Cumparsita」で包み込むっていう。
高橋:「Cumparsita」のオルゴールバージョンは?
柴:個人的にはぜひ欲しいけど(笑)。
王:「Guatemala」はたしかにB 面頭っぽいかも。
吉木:俺もまったく同じこと考えてましたよ。
大:うんうん。
王:じゃあ吉田くんの最終承認をもらえれば決定ってことで。
吉田:そうですね……僕もそれしかないと思います。
高:どうでもいいと思ってるだろ、お前(笑)。
柴:「早く終わんねえかなあ」みたいな。
吉田:いや……この部屋がめちゃくちゃ暑いんですよ……クーラーがなくて(柴崎注:この座談会の収録は2022年8月に実施されました)。
柴:いま半導体不足で大変らしいからなあ。
吉田:そんな高等な理由じゃなくて、ただ元から付いてなくて……。とにかく汗が……。
高:なんでそんな部屋でやってるんだよ。パソコン持って別の部屋いけよ(笑)。
吉田:いや、これデスクトップパソコンなんで重くて運べない……。
高:なんでクーラーがない部屋にデスクトップパソコンを置くんだよ(笑)
曲順、意外とすんなり決まる
高:その他のゲラーズの曲って、明るいのか暗いのか不思議なバランスの曲が多いすよね。とすると、どうやって並べるのがいいのかなあ。
y:ライブの曲順を参考にするっていうのもいいかも。中期のライブだと「9 teeth Picabia」がラストのパターンが多かったよね。で、「Buscape」始まりが多かった印象。
大:「Buscape」がA2はいいと思うな〜。「9 teeth Picabia」はやっぱりB面ラスト。
柴:「Cumparsita」から「Buscape」を続けて聴くとめちゃくちゃ音楽性の幅が広いバンドだなってなるよね。
吉木:いいと思う。
柴:えーと次は……集計結果のランキングでいうと、「M」が次の5位にきてますけど、これはどこがいいでしょう。
王: A面に川副さんヴォーカルが続くこと考えると、B面の2曲目とかかなあ。
y:そう考えると、A面のラストを何にするかってのも割と難しいよね。うーん、「Niwatori」かな。
王:あ、それわかる。
柴:ひと呼吸付いてB面にひっくり返す前に、「Niwatori」の余韻の感じはたしかにいいかもね。今のところ、
A1「Cumparsita」
A2「Buscape」
A3未定
A4「Niwatori」
B1「Guatemala」
B2「M」
B3未定
B4「9 teeth Picabia」
最後に「Cumparsita」のリプライズ。
王:おお、そしたらあと2曲だけだ。
大:「Locomotion」はA面、B面どっちだろう。
y:「9 teeth Picabia」の前がいいかも?
柴:あ〜、「9 teeth Picabia」の熱狂の前にちょっとクールダウンする感じで泣けますね。
王:吉田くんは「Locomotion」はどこがいいと思う?
高:靖直は「Locomotion」がどんな曲か知らないんじゃない?
吉田:いや……あれは名曲ですよね。とても悩ましい問題です。
高:絶対適当に言ってるだろ(笑)。
吉木:(笑)。逆にA-3は「Colorado」がすごくハマりそう。
y:たしかに。じゃあ自動的にB3は「Locomotion」だ。
吉木:すごい!決まった!紛糾して全然決まらないんじゃないかと思ってたけど。ちゃんとストーリー性も感じるし。
柴:収録分数的にもA面B面バランスいいし、バッチリですね。じゃあ、最終版はこれで。
SIDE A
1. Cumparsita
2. Buscape
3. Colorado
4. Niwatori
SIDE B
1. Guatemala
2. M
3. Locomotion
4. 9 teeth Picabia
5. Cumparsita【Reprise】
ゲラーズの今後?
大:このベスト盤のレコ発ライブとかやらないんですかねえ?
y:うーん、難しいんじゃないかなあ……。
柴:まあでも、過去作とはいえサブスクに出したい、LPで出したいっていう気持ちがあるってことは、メンバーも若干前向きなスタンスになっているってことじゃないですかね?
吉木:いやー、やってほしいわあ。
大:リハじゃなくてもいいから、バーベキューとか温泉旅行とかそういうところから始めて……。
柴:個人的には、脱退したはずのシゲルさんが今回のベスト盤のジャケットイラストを描き下ろしたっていうところに可能性を感じるんですけど、どうなんだろう。
高: ここまでみんなの手を借りてベスト盤まで出してもらっているんだから、やってほしいけどなー。「解散」ってハッキリ言っているわけじゃないし、みんなどっかにやりたい気持ちはあるんじゃないかなと思うんだけど。
大石:真面目なことを言うと、メンバー自身がやりたくなかったら無理に再始動する必要はないとは思う……私も結構映像が手元にあるけど、なんて言ったらいいんだろう、「それでもバンドは続く」的なドキュメントの素材としては使いたくないっていう気持ちはあるかなあ。
y:そうだね。再始動のためとかじゃなくて、大石ちゃんが撮り溜めている映像を見ながら遠い将来にそれぞれが当時のことを振り返るみたいな映画があったら観てみたいかなあ(笑)。
もちろん、ファンとしてはまたライブを観たい気持ちもありつつ……。みんなが苦悩していた様子もたくさん見てきたからなあ。なんだろう、メンバーみんなが幸せに、それぞれの才能をこれからもそれぞれの形で見せてほしいなっていうのはすごく思うかな。
柴:なんかしみじみしちゃいますね。
吉木:いや〜、しかし今回久々に曲聴き直したらホントカッコいいんすよね。
高:そう。全然色褪せてないよ。
王:俺はやっぱり今未発表になってしまっている新曲の音源がどうにかして世に出ればいいなと思ってます。「勝手にミックスして出しちゃえば?」って意見もなくはないんだけど、制作に付き合っていた身からすると、やっぱりそこはメンバーを通してやりたいなと思うんですよね。だから、改めてメンバー側から「あの曲やっぱリリースしたいわ」ってモチベーションが出てくればぜひ協力したいと思ってます。
吉木:活動最後の方のリハでもトクマルさんが新曲持ってきたり、かなり面白かったんですけどね。それがしかもhideみたいな曲で。意外すぎる(笑)。
王:川副さんの佐野元春調の曲とか、オーソンさんのランシドみたいな曲とか、いろいろいいのがあったんだけど(笑)。
柴:吉田くんは何か希望はありますか?
吉田:……やっぱり出ていない曲があるっていうのはもったいないし、メンバーのみなさんが望むならぜひライブも観てみたいですね。
高:みんなが言ったことのまとめじゃん(笑)。
吉田:そうやって僕をオチとして使おうとしてますよね……いやでも、何か展開があるなら見てみたいというのは本心です……。
高:改めて言うけど、20年以上キャリアあってレパートリー15曲ってやっぱすごいよなあ。そんな寡作なロックバンドほとんどきいたことない(笑)。
王:普通、そんなに寡作だと忘れられちゃうんだけどね。
高:それでも度々話題に出るのがスゴいよ。
大:「東京インディー」のレジェンドですからね。
柴:ホントに。真面目な話、ゲラーズを抜きにして日本のオルタナティブロック史は語れないですよ。
大:あれすごかったね。2015年の下北沢INDIE FUNCLUBでゲラーズがShelterのトリをやって、ラストになぜか「ヘイ・ジュード」の大合唱をやるっていう(笑)。あのときも、ステージ袖に出演者がみんな集まって超盛り上がってて。お客さんもみんな歌ってたし。
柴:たしかにあれは象徴的なシーンだったな。
大:こういう稀有なバンドがいたってことが風化していっちゃうのはイヤだよね。
柴:ほんとにそうだね。そういう意味でも、今回のベスト盤と配信リリースをきっかけに、リアルタイムのファンに限らずたくさんの人たちに聴いてもらいたいですね。
【リリース楽曲の全てを網羅したコンプリート配信はこちらから】

20年来の幼馴染というメンバー
(田代幸久、川副賢一、トクマルシューゴ、大久保日向、新町慎悟)で結成され、
2度のフジロック出演も果たしたオルタナティヴ・ロック・バンド。
199X年結成、2007年1stアルバム『GELLERS』
2011年ビッグシングル『Guatemala』
2013年EP『咲きっぽ』
2014年シングル『クンパルシータ』をリリース